月刊『海外子女教育』2003年5月号より
さて先月は空で楽しめる不思議な虹の輪についてご紹介しましたが、今月はそれが地上でも楽しめる!というお話です。しかも虹の中に現れる人の形をした妖怪が動く!?というおまけ付き。
イギリスの少年魔法使い「ハリー・ポッター」が、大ブームになっていますね。我が家の十四歳の娘も夢中です。部屋の中は本のみならず、映画の特大ポスターや、カレンダー、ハリー・グッズがあふれていて、登場人物のハリーやロンのことをまるで友だちのように話しています。そんなハリー・ファンにとっては、夢のような「魔法」経験になるかも!
さてハリー・ポッターシリーズは、魔法学校に入学した孤児の少年ハリー・ポッターが、両親を殺した邪悪な魔法使いと戦いながら成長していくイマジネーションあふれるお話ですが、実はもともとヨーロッパの寒い地方では、魔女や魔法使いなどが生活の中で身近な存在ですよね。日本でいえば、「河童」のようなものでしょうか。人々の生活圏内に緑豊かな森があり、そこかしこに妖精の気配が漂っています。家々の芝生の庭には「森の小人」の置物が置かれています。
ドイツでも、ほうきに乗った魔女のキャラクター人形は人気者。あちこちで見かけますが、ドイツ中部のハルツ山脈にあるブロッケン山には、厳しい冬に別れを告げる五月祭の前夜、四月三十日に、ヨーロッパ中から魔女が集まって魔女会議が開かれるという伝説があります。ゲーテの「ファウスト」の中、「ワルプルギスの夜」で紹介され有名になりました。
なぜそういう伝説が生まれたのでしょうか? それはブロッケン山には「ブロッケンの妖怪」と呼ばれる現象が現れるからです。
これは、山頂で霧が立ち込めているとき、七色の美しい輪の中に、人の形をした妖怪が現れて、しかも動く!というものです。魔法のようでしょう?
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実は、これは見ている本人の影が、前方の霧や雲をスクリーン代わりにして、写し出されたもの。早朝や夕方に人の立っている前方に一面霧が立ち込めているとき、背中のほうから日が当たると丸い虹の輪が出て、その中に自分の影が写るのです(イラスト参照)。当然自分が手足を動かすと、その中の影もうごめきます。
初めて見た人が、魔法だと思ったのも無理はありませんよね。これはブロッケン現象として世界中にその名を知られるようになりました。
ちなみに、ブロッケン山は、今では身近な山です。その昔は旧東ドイツ領であったため、統一後にやっと西側からも気軽に行けるようになリました。山頂までかわいい蒸気機関車で行くことができます。なかには、マウンテンバイクで山頂まで行く人もいるくらいのなだらかな山で、標高一一四二メートルです。ただ「魔女の山」ということで、さすがに車では乗り入れられませんが、現在ヨーロッパに滞在中の方は夏休みにいかがでしょうか?
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| 写真の右下に注目! よく見ると、人影の回りに光の輪が……合成写真じゃありませんよ |
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| 撮影:只見荘主人 |
もちろん、このブロッケン現象は、ドイツだけではなく、他の国々でも見られる現象で、日本では南八ヶ岳や北岳が有名です。今までは高い山からしか見られないと思われていました。苦労して高山に登り山小屋に泊まって朝早くに起き、しかも霧が出ているときしかダメ。と、まあ禁欲的なまでに(?)シビアな条件をクリアしなければ見られないものと思われていたのです。でも最近平地でも見られることがわかりました! 上の写真は実は日本の福島県、只見川の橋から撮影されたものなんですよ!
ポイントは「冷たい水が流れる川」です。水が冷たいと早朝には霧が出ます。夏の早朝、びっしり霧が出ているときに日の出の太陽を背にして橋の上に立ってみること。要は先ほど説明した気象条件さえクリアすればいいのです!
チャンスがあれば、あなたも夏に「ハリー・ポッターの魔法」気分を味わってみてはいかがですか? ファンタジー気分が盛り上がることうけあいです! そして首尾よく見ることができたら、「どこどこで見たよ♪」と教えてくださいね!世界中に広がるブロッケンの輪!なんていいと思いません?
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