私情つうしん 第3号 1995年10月発行

巻頭言

「すでに日本人生徒が何人かいる現地校に編入した日本人の子どもに、日本人の輪の中に入ってはいけない、現地人生徒との交流に努めよと言うのは酷か」
 ある日、仲間とこんなテーマを巡って議論しました。彼は、日本人が固まっているのを見て日本人に好印象を持っていないかもしれない現地人生徒と、渡航したばかりでことばも何もわからない状態で友達関係を築くことは至難の技に違いないと言います。しかし私は、至難の技に違いないことは認めた上で、海外の学校に足を踏み入れたのなら現地の子どもたちの中に是非飛び込んでいってほしいと思っています。
 ただここで強調しておきたいのは、一般世間で求められているような『帰国子女の特性』を形成するために「飛び込まなければならない」という『べき論』としてではなく、「せっかく海外の現地校に入ったんだから、わざわざ日本にいたときと同じ状況に身を寄せて安穏と過ごすのはつまらないと思うよ! 何か新しい発見があるかもしれないから、ちょっと冒険してみない?」という、あくまでも『オススメ』の心を前提にしているということ。
 前号の『往復書簡』欄で大山さんが「私はいつでもどこでもただのオーヤマなのさ」と言い切っていましたが、内面的な帰国子女へと自己形成していくためではなく、あくまでも与えられた環境に自分をどのぐらいcommitさせenjoyできるか、たまたま海外に住むようになって日本では享受したくてもできない状況が目の前で展開しているのだから、多少のリスクを負っても(不適応という痛手を被るリスクの存在は認めますが)その状況にアプローチしていってみるのが、ひとりの人間として前向きな生き方なのではないかと思うのです。
 さて、読者の皆さんはどう思われますか?

by 森田美樹