logo 私情つうしん 第22号 2001年4月


だれでもみんな地球人

〜もっとも大切な前提〜

by ラシェール・アレン=シャーウッド

Translated from original in ENGLISH by Atsushi Furuiye

  『私情つうしん』#20の特集を全部読んで、自分の国で「帰国子女」と呼ばれることがどういうことなのか、わかったような気がしました。私は日本人ではないけれど、私自身の経験を書いてみたくなりました。
  私がナニジンであるかと聞かれても、私にはきちんと自分の国籍を答えることができません。30年も沖縄に住んでいたからです。
若き日のご両親

 私の生まれ育ちがどのぐらいチャンポンになっているか、たとえば母はドイツ系中国人で、父はアメリカ人の黒人です。父はショービジネスで働いていたので、子どもの頃はあちこち動いて過ごしていました。まず生まれたのは東京。それから香港。私が11歳の時、父が沖縄の米軍基地でいつも演奏するようになったのでそこのアメリカンスクールに入りました。当時はまだ学校で日本語を教えるようになっていなかったので、日本語を普通に話すことはできても漢字は書けません。
  私のパスポートは香港BNO(在外英国人)で、日本はおろかイギリスにも中国にも属していません。もう日本に30年も住んでいるのに、日本の法務省が私や母をどう扱っていいのかわからないらしく、ビザは長期滞在者のままです。
 こんなことを書いたからって、私に「みんなと違うのはどういう感じ?」とか聞かないで下さい。私はただそういう境遇に生まれただけなんですから。アイデンティティ・クライシスとは長いつきあいです。かつては「ミス・ユニバース」をテレビで見て泣いたこともあります。私がもし出場したとして、私のタスキにはなんて書いてあるんでしょう? 「ミス・空白」?「ミス・適用ナシ」?

 初めての希望の光は、高校でのエスニック・スタディーズの授業でした。先生はまずクラスを白人と黒人の二つに分けたんです。(70年代には、まだ日本人の生徒はいませんでした。)それぞれのグループが向かい合うように椅子を2列に並べ、先生はそれぞれのグループのリーダーに向かって、自分の仲間に入るべきメンバーを表にするように指示しました。先生は2枚の表を読み上げながら、呼ばれた生徒はしかるべき椅子に座るように言いました。それが終わったとき、私の立場はすごくはっきりしていました。どこでもないんです。みんなは座っているのに、私だけが立っていました。どちらのリーダーも私を表に書き込んでいなかったんです。私はすぐその場で死んでしまいたいぐらい、打ちのめされました。(ほかのみんなは恥ずかしそうに黙っていました。)
本人:9歳、そして最近

  それはまるで悪夢のようでしたが、幸いなことに先生はとても賢い対応をしてくれました。先生は自分の椅子を引っぱり出して、2組のディベート・グループの真ん中に置き、「ラシェール、ここが君の席だ」と言ったんです。私はちょっとホッとして、先生の椅子に座り、ディベートが始まりました。
  最初のしばらくは辛い気持ちに浸っていた私ですが、やがて熱を帯びたディベートが私の注意を引きつけました。30分ほど白人と黒人の生徒たちがそれぞれ「なぜ自分たちが正しくて相手は間違っているか」などなどを言い合っているのを見ていて、突然わかったことがありました。「どっちも、みんなバカみたい!!」と、可笑しくなったんです。
 どちらも、それぞれのカテゴリー(ぼくはコケージアンの白人、私は日本人、など)の限界に縛られていて、全体がまったく見えなくなっていたんです。その時、私は先生が素晴らしいことをしてくれたことに気がつきました。先生はそこまで考えていなかったかもしれませんが、国籍や人種など、そしてどんなものにせよそうした分類やラベル以上の何かがあることを、私に見せてくれたんです。私はもしすべての生徒に一人ずつその真ん中の席に座ってみる機会が与えられたら、みんなの視野をとても大きく広げることになったのではないかと思います。

  その日以来、私は「あなたはナニジン?」という質問に対して余裕を持って格好良く答えられるようになりました。今でも、私の答えは、「地球人」です。

  結局、人は自分の人生で何が起こるかをあらかじめコントロールすることはできないにしても、そして自分の境遇や国籍がどんなものであっても、自分が自分であることを受け入れることが大切なんだと思うんです。この広い宇宙には、誰が何と言っても自分はたった一人しかいません。辛い思いをしている時間があったら、表に出て何か役に立つことをしている方がよっぽどいいじゃないですか。みなさんが持っている国際的な経験をムダにしてはいけないと思います。
  とくに日本では、「みんなと違う」ことによって苦しんでいる人たちが大勢います。アイヌの人々、沖縄の人々、外国人、孤児、障害者、病人、HIV感染者、癌患者、ホームレスの人々、部落民……リストは延々と続きます。
  私は、そのような人々にはまさにみなさんのような方の手助けが必要なのだと思えます。何も知らない同僚や友達や親戚が何を言うにしろ、そもそもそう言う人たちはまさに何も知らないんです。ルイ・ヴィトンのバッグを買い漁っているヒマがあったら、お願いだから未来への夢をたしかめてください。
  日本は、社会的な危機に瀕しています。誰もそうと認めなくても、構うことはありません。みなさんだけが国境の向こうに何があるかを知っているんです。カウンセリングを学びたければ、Tokyo English Life Lineで一週間ぐらいのボランティアを行えば無料で電話によるカウンセリングのコースを提供してくれています。このコースは、ほかの人を助けるばかりでなく、自分の問題を解決するのにも役立つはずです。ほかにもいろいろとあると思います。なにしろこういった組織はみなさんの力を必要としているんですから、両手を広げて迎えてくれるはずです。(編集部注:まったくの偶然ですが、Tokyo English Life Lineからのボランティア募集を今号に掲載しています。)
  金がいっぱい詰まった宝箱を開く鍵を握っているのは、みなさんです。目を覚まして、うしろではなく前を向いて歩いて下さい。もし日本がグローバルな社会の一員になるとすれば、その転換を支えることができるのはあなたたちしかいないんです。
  でも、報酬を求めてもムダだということは言っておかなくっちゃなりませんね。みなさんのような人、あるいは私のような人は、決して社会に認められることはないんです。だとすれば、自分たちの成し遂げたことによって報われることを願いましょう。人々を愛し、何か新しいものをつくりだしたことによって自分たちが報われれば、それが幸せというものだと思います。
後列左から:本人、ハンガリーとアイルランドの血をひくご主人、75歳のお父さん。
前列左から:車椅子にのったお母さん、前の大家さん。

  ここまで読んで、「スゴイですね〜」と言っただけでまた落ち込むのはよしてくださいね。もし一人だけでは何もできないと言うんだったら、仲間を募って下さい。宗教に頼ってみるのもいいかもしれません。私自身はあまり信心深くありませんが、宗教がそういう孤独感を救ってくれることは知っています。それにキリスト教の、外国人と日本人とが混ざったグループを見つければ、話が合う人と出会えるかもしれません。何をするにしろ、まず最初はゆっくりと回りを見て、それから決めて下さい。日々の買い物でも迷うのに、これは人生を左右する決断でもあるんですから。
  そして決断を下すことができたら、それがどんなものであれ、心から成功をお祈りします。そして、あり得る限りの幸運を。そう、幸運も絶対に必要になりますから。自分の心を信じて進めば、正しい道に導いてくれるはずです。(何をしようとしているのか、人に言う必要すらないんです。自分自身にさえ嘘をついていなければ。)
  地球人の仲間のみなさん、忘れないで下さい。私たちは地球を未来の子どもたちのために住みやすくしていく使命があるんです。だから、表に出て何か始めましょうよ! それこそが幸せへの道だと思うんです。

  私の長い文章を読んでくれてありがとう。そして、ファンタスティックな新しいミレニアムに、人生の本当の目的を見つけられますように。

がんばってね!!



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