私情つうしん 第15号 1998年4月発行

『私情つうしん』インターネット版では98年2月からBBSを設け、読者のみなさん方の自由な意見交換の場としています。
以下はその中で取り交わされたある議論を抜粋・整理したものです。


BBSはこちらです



from Kiko

 私には帰国の彼女を持つ男友達がいます。彼からの悩み相談は帰国というところから離れず、わからない世界なので大体いつも聞いてるだけでもいいかと思ってきました。たまたまインターネットにこんなサイトがあるのに気がついたので少し確かめたく書いています。

帰国子女の方へ質問:

  1. 例えばアメリカからの帰国子女の方(彼のGFがそうです)は、今おおよその人に大きく豊かと思われているアメリカを自分のルーツだと自然に思いますか?(これは小さい時から向こうへ行っていた人の場合です)
  2. 英語をそれ程努力する必要もなく身に付けられて、外国語枠で楽に日本の大学へ入れ、卒業後も帰国子女ということが就職において普通の女子大生よりも有利であるというのは当たっていますか? (勿論職種にもよりますが、イメージとしても)
  3. 自分のアイデンティティがどうだとかいちいち思わないし、いざとなれば英語を武器に世界を渡っていけるというバイタリティ(楽観?)を持っていますか?
  4. 自分の日本人の彼にも脱あるいは超日本人してほしいですか?

from 村上博美

 娘は短期で2度イギリス滞在の経験があります。2度とも公立の現地校に通いましたが、日本人の子供は1人だけでした。その中で彼女は必要に迫られ、英語を覚えざるを得ませんでした。でも、全く違う2つの言葉を何の苦労もなく身につけられるというのは違います。たとえ小学生でも、相当の努力と涙無しには語れないエピソードがあってこそ身につくものなのです。しかし、それを悲観的に考えるか楽観的に考えるかが大切だとおもいます。娘は常に前向きで、楽しもうと考えているようです。親の私でさえ感心します。その様子が他人にはうらやましく感じるのかもしれませんが、同じ年齢なら生きてきた時間も同じです。


from 山田 英

 現在米国はNJ州に在住しており、2人の海外子女の娘を持つ父親です。Kikoさんを含め、日本におられる一般の方が思われているように「子供たちは簡単に英語が取得でき全ての子供が完全なバイリンガルになる」とは思えません。特に「9歳の壁」といわれる母国語形成の年頃では日本語にするか英語にするかでかなりのストレスがあり、本人は自覚がなくても小さな頭の中で葛藤を繰り返しているのが分かります。我が家では上が日本語、下が英語の母国語になりました。したがって学習面で上は英語で苦しみ、下は日本語を泣きながらやっております。子供たちは現地校、補習校、塾、楽器のレッスンと自分の責任の上で決めさせたとは言え大変な毎日を過しています。どこの家庭でも似たような環境です。


from 武部理花

 自分のルーツをどう見るかは、人によって様々だと思います。私の場合、小学校高学年から中学までの間英国に滞在しましたが、短い間でも自分の考え方等は大きく影響されました。自分の第2の故郷はどこかと言われれば、英国と答えます。
 一方、最近日本で中国の方と接することが多く、殆ど親戚づきあいのレベルの人たちもいます。東京に住んでいる私にとって、北海道の親族よりも、北京の「親族」のほうが身近に感じます。中国は住んだことのない第3の故郷に似たような感情を持つ国です。
 じゃあ、自分はどこの出身かと問われると、父が転勤族だったので両親が定住の地とした茨城県でさえ自分にとっては故郷ではありません。住んだことがない土地なので、「帰省」しても「家庭の中」は故郷だけれどもその土地は私にとって見知らぬ場所です。
「自分の心があるところが故郷」で、いいんじゃないかな。


from 古家 淳

 多くの人は、最初に外国に行き、現地の学校に入った時点で「読めない・書けない・話せない・聞けない」の4重苦に見舞われます。平均して1〜3年で日常の生活に支障のない程度にわかるようになり、3〜5年で本来の実力通りの成績を学校でとることができるようになると言われています。だけど、たとえば中学校も高校も外国で、外国の教科書で学んだ(アメリカの50州は習ったけど、都道府県の名前は習っていないような)人に、藤原鎌足と藤原定家の区別がつくと思いますか? 逆にあなたは、たとえばメキシコの州の名前を10コ、言えますか? 帰国子女のための特別枠の受験システムというのは、そういう人たちのために別のモノサシで「どれだけ勉強してきたか、どれだけの力を持っているか」を測るためのものとして生まれてきたと思います。
 自分の彼氏や彼女が「脱/超・日本人」してほしいかどうか、というのはこれまた個人的な問題でしょうね。ちなみにぼくのカミサンは新婚旅行まで飛行機に乗ったことのない人です。根っこがしっかりしている分、「自分」がはっきりしていて、それが「世界に通用する」のかもしれませんが。


from Kiko

 その後、彼に帰国子女の女の子(変な日本語)と日本から離れたことのない女の子に何か違いがあるのか聞いてみましたが「もちろん僕個人の捉え方だから一般化は出来ないけど、やはり美人と歩きたいというのにも似て彼女の特殊性(今現在の日本では英語など外国語がネイティブに近いほど出来るというのは大きな魅力であり優越性があるとされる)があるし、キャラクター的にも自立してるところかな」というものでした。大前提として日本より外国(特に欧米)が上だと思うのは何故?


from 武部理花

 日本に限らず、アジアの他の国々でも「ヨーロッパの言語(特に英語)が話せる」というのはステータスになっている傾向があると思います。(もっとも、東南アジアの国等では高等教育が近年まで、もしくは現在も英語で行われているので、「英語が話せる=エリート」という見方は存在する。)その根底にあるのは、現代の歴史観とか文化観が欧米に主眼を置いて成長してきたからではないかと思います。「欧米が上」、「他の諸国は下」という潜在的な意識は、一般的に日本人にはあるのではないかと思います。たとえば、外国人のホームスティを受け入れる家庭を日本で募集すると、欧米人なら言葉が通じなくても歓迎、アジア人やアフリカ人だとがっかりという人がいますね。こういう意識、なくなるといいですね。


あなたもBBSで発言してください。よろしくお願いします。