私情つうしん 第14号 1998年2月発行
『私情つうしん』では「帰国子女」というレッテル、ということでいろいろと述べられていますが、確かに私は自分の意志で勝手に留学したには違いないですが、それとは反面また「帰国子女」の枠に堂々と該当し、その権利を主張し、受け入れプログラムを利用できたりするだけ「帰国子女」の皆さんは恵まれていると思います。レッテル、レッテル、と悲観的にばかりとらえずに、むしろ「ブランド」としてそのいい面を大いに活用していくべきだと思います。
(編集室による注:この議論の一例としては、たとえば#4、「海外生まれの海外育ちの日本人も日本に住んだら『帰国子女』?」あるいは号外、「『帰国子女』って、何?」)
幼いころ留学先で、英語ができないために悔しい思いをした私は、自分の「日本人」というアイデンティティを隠すことに専念して青春を過ごしてきたようなもので、結果「日本人」という自分を否定してきたので、自分に心底自信をもてずに生きてきたように思います。「自分であること」を大山さんは主張してこられたようですが、「よそもの」と他人にカテゴライズされている、と悲劇のヒロインになっているうちは本当の自分になれるとは思いません。「日本人」であることをまずは自分自身で真正面から認めて有り難く思うことができて初めて自分に自信をもて、「自分」になれるのだと思います。どんなに否定しても自分は日本人であることには間違いないのですから。また「帰国子女」を変な日本人と言ってからかったり拒んだりするひとは、となりのうちにはピアノがあるのに自分の家にはない、とやっかむのと同じように劣等感を抱きがちなひとなのです。丁度コカコーラとペプシコーラの宣伝のように、ひとをけなすことによって自分を上におこうとしているだけで、それがたまたま割合からいってmajorityであるか、minorityであるか、という問題だけです。そのひがんでるひと1人が100人の帰国子女がいる教室にぽつんと座ってみたら、英語ができないそのひとが「へんなやつ」、「変わったひと」になるだけの話です。せっかく英語や西洋人のものの考え方を学んだなら、日本で受け入れてもらえないと悩んでいずに、自分から積極的に「日本」を学び、吸収し、武器にして、世界という広い舞台で踊ってみることを考えればいい。何のために日本人でありながら母国以外の言葉という高価な財産を手に入れたのか。
テレビで中島文博作の「絆」というドラマをみました。中学生の帰国子女が陰険ないじめにあい、アメリカへ親に連れ戻されていく、といったシナリオです。「僕は日本に負けたのかな」とか、「やっぱり僕は日本人なんだ」と言うその子に、できれば残って受け入れてもらえる努力を続けてほしかった。そうしなければやっぱりただの「へん・ジャパ」(変なジャパニーズ)で終わってしまうような気がしたからです。まぁ、あれ以上無理にいじめられながら日本にいて、徹底的に日本を嫌いになってしまったら逆効果で、もともこもなくなってしまうのですが。問題は周りが認めようがどう言おうが、自分から日本人であることに誇りをもつことです。「よそ者であり続ける」という覚悟と、島田氏の思想についてふれられていますが、それは言い換えてみれば「日本を拒んでいる」ことなのではないでしょうか。英語ができないひとたち、西洋文化を理解できていないひとたちと、より一層西洋人に近い自分とのあいだにいつまでも一線を引いていたい、ということです。自分が西洋人になりきってしまいたいからです。かといって西洋人に日本人が馬鹿にされると、腹がたったりもします。おかしなことです。そんな自分は一体何なのって。
皆さんは2つ(以上)の世界を生きているのだから、ひとの倍苦労がともなうのは当然のことであり、むしろその苦労を背負ってもなお生き延びていける自分にもっと誇りをもち、そんな自分の日本・世界における役目を意識しながら生きていくべきだと思います。陸では陸の、海では海の掟に従い、両方のいいところを自分のものとしていきながら、コミュニケーションの技術の発展にともないグローバル化が進む今日、またバブル崩壊後これまでの英語教育やそれをとりまくビジネス等のあり方を考え直さなければならないと言われるなか、文化と経済の発展に足並みをそろえ、「自分」のアイデンティティや役割をよく認識すること。そして時代と技術の潮にのみこまれないようしっかりと足場を固めながら、どう生きていくことが自分にとって、世にとって最も有意義なのかを常に考えながら自分の時間、経験、知識を大事にして生きていくことができてはじめて「自分」でありえるのだと思います。
プロフィール
年 齢:30歳
アメリカ在住歴(計12年半):
*小学校5年〜中学校2年(4年)
*Bachelor's(専攻:英文学・英作文)
Master's(図書館情報学:リサーチ専門)(7年)
*卒業後勤務(1年半)
8カ月の受験勉強の後高校受験合格、日本の高等学校で高等教育を受ける。
現在:マーケティングの会社の国際部でマネージャー及びマーケティング・ディレクターとして企画・事業開発・宣伝・海外との契約・交渉などに携わっている。またプライベートでは、Toastmasters Clubの Vice President of Public Relationsを務めながら、コミュニケーション・スキルについて研究している。