私情つうしん 第14号 1998年2月発行
帰国MOMの立場から
by 小倉敬子
『私情つうしん』は老若男女を問わず帰国子女の方々の文章が何といっても多いため、私の様な帰国MOMにとっては少々肩身が狭いのですが、帰国子女ががんばっているのと同じ様に帰国MOMもそれぞれの地域で活躍していることも知っていただきたいものです。中でも帰国子女の受験のための学校案内を発行している「フレンズ」は一番良く知られていますが、関東周辺には私が知るだけでも10近くの団体があります。一番多い目的は、やはり帰国子女を持つ親のネットワークづくりですが、それを基本に、国際交流、異文化理解、日本語教室、外国人の相談及び生活支援など日本に住む外国人への理解や援助活動を地域のニーズに即して行っています。
関東圏の団体のネットワークである「横の会」では、年1回情報交換及び学習のための会合を開いています。昨年は私達の担当でしたので川崎市の国際交流センターを利用し、川崎市総合教育センターの甲斐先生を迎え、川崎市における帰国子女及び外国人子女の現状、外国人に対する語学派遣講師制度、相談の種類につき話していただきました。この派遣講師の中にも帰国MOMがけっこうおられますし、川崎在住で日本語のたんのうな外国人の方々も登録し小・中学校で活躍されています。また、川崎市では平成9年度より教育委員会で「民族ふれあい事業」が始まり、外国人を小・中学校に迎え、歴史、文化、生活などその学年に合った内容のプログラムを展開できるようになったのは喜ばしいことです。私もこの事業のコーディネーターとして協力していますが、各学校の帰国MOMも協力して下さっている様で心強い限りです。
また、当日のもう一つのテーマは、各グループが把握しているカウンセリングの機関や医者などの情報を交換することでした。これも会を運営していくなかで欠かせないものですが詳しい情報がお互い充分入ってこないのが悩みの種だったのです。『私情つうしん』に意見を寄せてくる方々は、元気で前向きに生きている方ばかりの様ですが、私達のところに相談に来られる方の中にはカルチャーショックによる日本社会への不適応をはじめ、いじめ、登校拒否、家庭内暴力、精神障害、退学などといった深刻な問題をかかえた方も多く、私達先輩MOMの体験わくでは解決がむずかしい問題に直面することも少なくありません。しかし活動を通じ様々な分野の方々とのネットワークができ、互いに協力することで一人一人の問題が少しでも解決に近づけるよう努力しているのが現状です。
この『私情つうしん』は、インターネットを通じ様々な方が読まれることでしょうが、良きにつけ悪しきにつけ自らの意見を表現しぶつけることさえできない帰国子女もいることを、またそういう方々をサポートしている帰国MOMグループがあることを知っていただきたいと思います。「どうして自分の意見を言わないのか」とか「もっとしっかりすれば」と言うことは簡単ですが、心の痛みや苦しみは本当に相手の立場に立って共に考えなければ分かるものではありません。外国人子女が多くなった現在、帰国子女問題は以前ほどはなくなったと思われがちですが、両者は共通の問題が存在し、今なお決して解決していないことなのです。