私情つうしん 第11号 1997年6月発行

1枚の調査票から

by 古家 淳


 やや旧聞になるが、今春、わが家の次男が小学校1年生になった。地元の公立小学校に入れたのだが、その時配られた書類の中に1枚、仰々しくマル秘のスタンプが押されているのがあった。要するに海外で暮らしたことのある子供かどうか、そうであれば家庭や幼稚園で、あるいは友達との間で何語を話していたかを問う調査票であった。
 同じ市内の小学校に勤める友人に尋ねると、市内の新入生全員に配ったわけではないらしい。うちの地元の小学校だけか? それにしても、わが家ではオヤジは帰国子女だが子供はそうではない。
 もっとフシギだったのは、その調査票には「日本国籍の子供で」とわざわざ注意書きがあり、外国籍の子供はこれの対象にならないらしい。先の知人によれば、外国人を対象にした用紙は存在しないとも言う。顔や名前を見ればわかるから、わざわざ調査しなくてもいいというのだろうか?
 だがここにも落とし穴がある。そもそも日本人だからといって、日本でだけ育ったからといって、子供が日本語だけで育つとは限らない。逆に外国人だからといって日本語を話せないと思いこむのは早計だ。事実、次男の隣のクラスには、肌の色の黒いブラジル人で、流暢に日本語を話す子供がいる。
本来、もしもこのような調査を行うのならば、すべての子供に対してどこで生まれ育ったか、どんな言葉と接してきたかを問うのがスジではないだろうか。国籍なんかどうでもよい。
 最後にもう一度、件の友人に登場してもらうと、この調査票は文部省の統計のためであって、指導に役立てられることはほとんどないそうだ。マル秘にすべきは、こんなエエカゲンな調査をやっていることそのものかもしれない。


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