私情つうしん 第1号 1995年6月発行
巻頭言
その晩、F氏と私はほろ酔い気分に浸りながら、悶々とした思いをぶちまけていた。
「なんかこう、『自分はこう思う』って言える場がないんだよねー……」
F氏は、メディアの領域で海外・帰国子女教育に従事する帰国子女。仕事上さまざまな人からさまざまな刺激を受け、なおかつ自身がその当事者(対象者)でもあるため、コトバあるいはカラダでもって自然に反応したくなる。しかし自分の問題であるだけに、その反応は仕事の枠をはみ出すことも多い。あまりにも自然すぎて、仕事のなかで表現していくにはあまりにも“生”だと言うのだ。私も帰国子女、同じような思いはいくつも身に覚えがある。二人ともその「反応の燻り」を持て余していたのである。
しばらくの沈黙。が、我に返ったF氏が宣った。
「そうだ、僕たちで発信するメディアをつくっちゃえばいいんだよ!」
まさに晴天の霹靂、目からウロコ状態。暗黒の視界にひとすじの光が走った。
酔いが半ば醒めた頭を寄せ合って、さっそく経費の試算。なんとか手弁当で賄えることが判明し、ますますコトは現実的色彩を帯びてきた。
すっかりイイ気分になってしまった私達は
「本当に始めるんだったら、Oさんにも加わってもらおうよ」
と意気投合。OさんはF氏の同僚である。後日、Oさんにコトの経緯を話したら、
「ワクワクしてきますねー!」
と二つ返事で乗ってきた。
かくしてこの『私情つうしん』は、私達三人のワクワクする思いが結集して日の目を見るに至った、手づくりのできたてホヤホヤ通信なのである。
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『私情つうしん』は、海外・帰国子女教育のみならず、国際理解、異文化交流など、教育、個人と社会あるいは世界との関わりや、人間のアイデンティティの追及など、あらゆるテーマをさまざまな視点からとらえるこ
とを目的としています−−こう宣言すると堅苦しく思われるかもしれませんが、要は「ねぇー私はこう思うんだけど…」「なんだ、君もそう思ってたのか」「ヘェー、そんな考え方もあるんだな」ってなことをみんなでワイワイ自由に発言し合い共有していける場をつくっていければと考えています。それともう一つ、やっぱり私達帰国子女のような、社会のなかでちょっとチガウと言われがちな人々がもっと楽しく生きていけるようになってほしいという願いもあります。そういう意味で、私達のワクワクがさまざまな人に伝わっていってほしいと思います。
元気な産声をあげた『私情つうしん』が、読者の皆様にとっても心のカンフルになれば幸いです。
by 森田美樹